このたくさんの数多い人の中から
知り合いになったということは、
とうてい人智では究明することのできない、
因縁という不可思議な幽玄微妙の作用の
いたすところである。

しかるにこの因縁という
不可思議な作用によって結ばれて、
知り合う仲となったものを、
己の気に食わぬとか、
あるいは心に合致しないとか、
彼にはこういう欠点があるとか、
または与(くみ)しがたき習癖があるとか
等々の理由をつけて批判排斥して、
せっかく結ばれた因縁を無にするというのは、
天意を冒(ぼう)とくする者と
いうべきである。

中村天風